靴磨きの値下げ






靴磨きが高級になりすぎたから、もう一度日常に引き戻してみました。




ここ数年、靴磨きの料金は全国的に上がり続けています。




はっきりと言いますが、原価の高騰以外の理由が大きいと思っています。




もちろん、職人の技術には正当な対価が支払われるべきです。




でも、その“当たり前”が、かえって靴磨きを「特別な贅沢」にしていないか──。




僕は、そう感じました。



これは前職の経験も大きく影響しています。



僕は以前、LPガスを商材に営業職をしていました。



お客様に案内をするのは「値上げの時だけ」。




原油価格は日々上下しているのに、値下げの案内なんて一度もしたことがありませんでした。




「下がったから安くします」なんて言えない仕事や商材に、僕は誇りを持てなかった。




その違和感をこの仕事にも感じ、実行に移しました。








靴磨きって、本来もっと気軽に頼めるものでよかったはずなんです。



「また履くから綺麗にしておこう」とか




「あの人に会う前に手入れしておこう」とか





そんな日常の中のひとコマにあっていいものだったはず。





でも、価格が上がれば上がるほど「特別な日だけ」「本当に必要な時だけ」になっていく。




その流れはお客様だけではなく、この仕事の未来にとってもいいとは思えませんでした。




全国の靴磨きサービスを行なう者が、みんな“夢の国”を目指す必要はないと思うんです。




誰もがディズニーランドにならなくていい。




USJも全国にあったらつまらないですよね。




そこにしかない体験もあれば、もっと気軽で、もっと生活に寄り添う靴磨きもあっていい。




だから僕は、靴磨きの料金を大幅に値下げすることにしました。




あえて、業界の相場に背を向けてみます。


もちろんリスクはあるし、価格破壊をするなと言われることもあるでしょう。





値下げすると言っても、「格安」とまでは言い切れません。




でもこれは、単なる値下げではありません。





“想いある価格改定”です。




『靴磨きって気持ちいいよ!』という思いを広めたい。




そのために、上がりきった相場を下げる以上に、ハードルを下げる方法は僕には思い浮かばない。




毎日は夢の連続じゃない。けれど、毎日を気持ちよく歩くために。




僕が目指すのは“玄関先の靴磨き”。



はじめて自分の靴を磨いた玄関先でのあの感動。



ライトアップも、アトラクションもいらない。




ただそこにあって、日々の出発を整える存在でありたいと思っています。




世間の相場の半額程度かもしれません。




ただ、だからといって半額のクオリティで提供するつもりはありません。



靴磨きを、もっと身近に。もっと自由に。




そのための、小さな革命だと思っています。




この価格が、誰かにとって“背中を押される一歩”になれば嬉しいです。




「特別な日だけじゃなく、いつもの日にも靴を磨こう」





そんな気持ちが広がっていく未来を目指して、今日もブラシを握っています。





JOURNEY 飯塚




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